吐出の羅針学

「吐出の羅針学」トップへ戻る。

表面張力と液ダレの関係

過去2回は、流体を吐出させる際に重要な「粘度」について、説明をしました。今回は、「粘度」と並んで重要な、液の性質である「表面張力」について説明をします。液を吐出して止めるという作業を繰り返す場合、液の吐出を止めたのにもかかわらず、液がたれるという現象が発生して、現場担当者の悩みの種になっているという話を、良く耳にします。そこで、この「液ダレ」に強く関係している「表面張力」について説明してみます。

表面張力の基礎知識

私たちは小さい頃から何気なしに『表面張力』という言葉を聞かされ、また使っていますが、この分野にもしっかりとした学問があります。最近ではインターネット上でも様々な知識を得ることができます。しかし、ここでは少し限定した内容に絞り、吐出装置と特に関係の深い『表面張力』と『液ダレ』の関係についてお話します。

まず、表面張力に関する基本的なお話をします。表面張力とは『液体の分子どうしが引き合い、表面積を小さくしようとする働き』であるといえます。雨粒が丸くなるのもその作用の代表です。

ところが、この雨粒がある固体に落ちたとしましょう。そうすると次のような形状になります。

この角度θを『接触角』といい、『濡れ』という現象の大小を表します。昔は体温計を壊すと水銀が飛び散ったものですが、この水銀はθ>90°となり、地面に落ちても球形を保とうとします。つまり、『濡れにくい』物質と言えるのですが、言い換えると水銀の分子間力(内側に働く力)が非常に強く、形を崩しにくい液体ということになります。

また、『毛細管現象』なんていう言葉も聞いたことがあると思いますが、上図のように表層の液体分子が微細管の内面と引きつけ合うことで水面が上昇していくこともこの『濡れ』の現象で説明ができるのです。言葉は難しいですが、『服が濡れた!!』という現象も、服の繊維を拡大すれば微細な隙間が網の目のようになっているため、これも毛細管現象の一つと言えるのです。

表面張力と液ダレの関係

次に、『表面張力』と『液ダレ』の関係について説明していきます。下図をご覧ください。一般的には液体をニードルなどの細い円筒から吐出させた場合、大小はあるものの先端に滴がついていますよね?

実は、普段は何気ないこの1滴が落ちるか落ちないかが、当社のユーザー様の製品品質を左右することとなるのです。さて、この滴がどのような条件で止まっているかを考えてみます。先端の滴が止まっている状態では管先端の外径に表面張力が働き、その表面張力による引っ張りの力が滴にかかる重力に勝っている状態です。

しかし、全てが上図のように説明できるわけではありません。表面張力の大きい液体の滴が落ちる瞬間はどうなるのか?皆さんは何らかの映像や画像で滴が落ちる瞬間を見たことがあると思いますが、滴が成長していくと液体のある部分がくびれて、最終的には分離することとなります。

このとき、滴が落ちるか落ちないかの境界はくびれ部の直径が関係してきます。下図のように、表面張力は円周上に働く力ですから、滴にかかる重力よりも、くびれ部の表面張力による引っ張りの力が大きければ滴は落ちません。

以上で『液ダレ(液の滴下)』に『表面張力』がどう関わっているかを理解していただけたかと思います。 では、次に実際の生産工程で実施されている『液ダレ』防止策を紹介しましょう。

液ダレを防止する

ジュースや化粧品などの量産品における充填工程では完全に自動化が進み、ロボットやアクチュエーターなどを上下に高速で動かしながら充填することは珍しくありません。接着剤などの塗布も、自動化ラインでは多関節ロボットが縦横無尽に動き回っています。

このように、加減速に伴う力が働くような環境下では、充填機や塗布機のノズル先端に滴があると、たとえ前述の『表面張力』と『重力』がバランスを保っていたとしても液が滴下してしまうことになり、充填精度のバラツキや製品の汚れ・生産ラインの停止など、多岐にわたり悪影響を及ぼします。

液ダレを防止するには、ニードルなどの管の先端径を小さくする対策がとられますが、先端径をどのくらい小さくすれば効果的かというのは、経験値に頼らざるを得ません。

そこで当社製品(ヘイシンディスペンサー)の特長の一つでもある『逆転・吸込機能』が有効となります。ニードル先端に滴が付着した状態で待機・運動するのではなく、停止と同時に『逆転・吸込機能』を使って液体を吸い上げ、液体を管の中に収納します。これにより液体を安定した状態にしておくことで液の滴下が防げるのです。もちろん、ニードルの内径が大きすぎると上記のような滴の現象がニードル内で発生することになるので、このあたりも液体の特性を見ながらの選定が必要になります。

キャプテンメッセージ

今回の説明で、「液ダレ」は「表面張力」<「重力」となった場合に発生するということをわかっていただけたと思う。
「表面張力」>「重力」とする方法はいくつかあるが、液の表面張力や密度を変えることは、液の性質・性能を変えて本来の目的を果たさなくなる可能性があるので、ニードルなどの管の先端径を小さくするか、液の先端を管内に納める(納まるように吸い上げる)ことが、現実的な対応と思われますね。

「吐出の羅針学」トップへ戻る。

ページの先頭へ