技術コラム【吐出の羅針学】液体の温度と粘度の関係

「流体とは」編では、流体を扱うには、その液の粘度を知ることが大切であることを、「流体の種類」編では、液には粘度が一定であるニュートン流体やずり速度によって粘度が異なる非ニュートン流体があることを説明しました。今回は、液の温度によって粘度が変わることについて、説明したいと思います。

温度の変化と粘度の変化を見てみよう

一般的な液体は、温度が1度上昇すると粘度が数~10%減少するといわれています。 下図は自動車の車体工程で使用されている接着剤を、あるずり速度において温度変化させた場合の粘度のグラフですが、温度が273K(0℃)から323K(50℃)と50度上昇するだけで、粘度は1/4になります。 このように、高粘度流体の場合、温度変化に対して大きく粘度が変化する傾向が見られます。

温度-粘度曲線

粘度が変化する原因は?

温度上昇によって粘度が変化する理由についてですが、「液体の粘性は分子間の引き合う力」によるものと考えればイメージしやすいです。すなわち,液体が形を変えようとしても分子間力によって抵抗が生じる、これが「粘性」というわけです。 温度が上昇した場合、液体の分子の運動が活発になります。つまり分子は自分で勝手に動きたがるようになり,抵抗が減じる=粘性が低下するのです。

基準温度での粘度換算を数式にしてみると…?

温度と粘度の関係は次のアンドレードの式が有名です。

アンドレードの式

ニュートン流体の場合、数点の温度にて粘度を計測し、lnη-1/Tの片対数にプロットすると、一般的に、ずり速度に関係なくある温度範囲では直線となります。 対して、非ニュートン流体の場合、ずり速度によって粘度が異なりますが、ずり速度毎に数点の温度にて粘度計測を行い、片対数上にプロットをすると、傾きの等しい平行線が得られます。

下図は上述の接着剤についてずり速度毎にプロットしたものですが、計測範囲の温度において、平行線が得られていることがわかります。

アンドレードプロット

このような粘度―温度特性を作成しておくと、任意の温度で測定した粘度とこの関係図を用いて、基準温度での粘度に換算することができます。

気体の場合は、粘度は温度の上昇に比例する

なお、気体の場合、粘度は温度が上昇すると上昇します。 気体の粘性は、気体分子の衝突により分子速度が平均化される、つまり分子運動が活発になっているのにも関わらず、衝突により速度を減じられることが原因といわれています。従って、高温になり分子運動が活発になることで衝突頻度が増えるため、粘性も大きくなるのです。

キャプテンメッセージ

今回は、少し専門的な話をしましたが、理解できたでしょうか?温度が上がると粘度が下がるということは、日常生活での体験からわかりやすいと思います。対数とか絶対温度(K)などが出てくると、頭痛がする人もいるかと思いますが、粘度と温度には一定の法則があるんだということがわかってもらえればそれで結構です。

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