吐出の羅針学

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塗布ロボット(シーリングロボット)について

皆さんの製造現場では、ロボットをお使いでしょうか?
ロボットは一度動作を教示(ティーチング)すれば、何度でも同じ動作を繰り返し、昼夜の関係なく、動かすことができるため、様々な現場・用途で使われています。最近は動物や人間型のロボットが話題に取り上げられることが多くなっていますが、産業用ロボットは1980年代から盛んに使われるようになり、今では約80万台が世界中で稼働しています。特にアジアは需要の半分を占める市場であり、中でも日本は世界需要の約40%、35万台を使っているNo.1ロボット王国です。
産業ロボットと言っても、用途は様々で、溶接ロボット・組立ロボット・搬送ロボット・塗装ロボット・検査ロボット・研磨ロボット・洗浄ロボットなどに分かれ、それぞれに求められる性能・機能が異なっています。そこで、今回の「吐出の羅針学」では、接着剤やシール剤などの塗布工程で使われる「塗布ロボット(シーリングロボットとも呼ばれ、塗装ロボットに属する)」について説明したいと思います。

塗布ロボットの種類と特徴

塗布ロボット(シーリングロボット)には、大きく分けて垂直多関節ロボット・水平多関節ロボットと直交ロボットの3種類があります。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボット外観

軸数は、5軸、6軸が多く、人間の腕の構造に似ているため、人間の代替作業をさせる装置として最も合理的な形のロボットで、代表的なメーカーとしては、安川電機、不二越、カワサキ、ファナックなどがあります。

水平多関節ロボット

水平多関節ロボット外観

水平方向にアームが動作し、アーム先端のスライド軸のみが上下に動くようになっているロボットで、スカラ型ロボットとも呼ばれています。垂直方向の剛性が高く、水平方向へのコンプライアンス機能を持つロボットで、代表的なメーカーにIAI、蛇の目ミシン工業、ヤマハ発動機、エプソンなどがあります。

直交ロボット

直交ロボット外観

3軸など直交するスライド軸により構成されているロボットで、代表的なメーカーとしては、IAI、ヤマハ発動機などがあります。


塗布ロボットにとって重要な性能・機能

接着剤やシール剤などを塗布する「塗布ロボット」にとって大切なことは、狙い通りの位置に、狙い通りの量の液を塗布することです。一般に塗布する液は、流量(流速)一定で吐出されることが多いので、塗布する速度(ロボットの動作速度)が一定であることが重要です。また、狙い通りの位置に液を塗布するには、教示(ティーチング)位置通りに動作する軌跡の正確性も求められます。

ロボットなのだから塗布速度(動作速度)を一定に保つことくらい簡単だろうと思われる方もいると思います。ですが、自動車を運転していて、直線道路と同じ速度でコーナーを曲がれますか?  減速しないと道路から外へ飛び出しそうになりますよね。ロボットも同じで、塗布速度が遅い場合は、コーナー部でも減速せずに回れますが、塗布速度を上げてタクトタイムを短くしたい場合などは、コーナー部で速度を落とさなければなりません。

ロボット毎に、剛性や慣性モーメント・駆動機能力が異なり、コーナー部の可能最大速度が異なりますので、高速での塗布をお考えの場合は、ロボットの性能・機能を十分に把握した上で選定してください。

とは言っても、あまり塗布速度が速くなると、一定速度でコーナーを動作させることは物理的に難しく、速度を保ちながら回るには、動作の回転半径を大きくするしか手がありません。これは、液を塗布させたい場所(教示位置)から離れた内側をロボットが通過することを意味します。つまり、高速度塗布と小半径軌跡塗布とは両立しないものなのです。よって、現在の垂直多関節ロボットは、①速度変化するが教示点を通過させる軌跡重視パターンと、②教示点からずれるが速度変化を最小にする速度重視パターン、更に①~②の中間パターン、を選べるようにして、現場の用途・要求仕様に対応しています。

塗布ロボットの場合、教示位置通りに通過してくれない速度重視パターンは塗布品質を落とす要因になるため、どうしても軌跡重視パターンを選ばざるを得ません。そこで、最近では、ロボットの塗布速度変化に合わせて、液の塗布流量をコントロールさせる方法を採用されるユーザーが増えてきています。例えば、兵神装備のヘイシンディスペンサーは、応答性が高いサーボモーターの回転速度を変化させ、液の吐出流量を瞬時に変えることができるので、その特性を利用した2つの方法が用いられています。

一つ目は、コーナー部など速度が変化する範囲では吐出流量が少ない回転速度を、高速で塗布したい直線部では吐出流量が多い回転速度を教示する「パターン切替」方法で、二つ目は、ロボットの塗布速度信号をリアルタイムあるいは前もって受け取り、その信号(ロボット速度)に同期した吐出流量となるようサーボモーターの回転速度をコントロールさせる「完全同調制御」方法です。

塗布ロボット選定におけるポイント

塗布用のロボットを選定する際に確認すべきポイントとして、一般に、以下の6つが挙げられます。

  1. 可搬質量・各軸の負荷モーメント
  2. ロボットスピード(塗布仕様は、搬送ロボットより基本的に遅い)
  3. 動作軌跡の正確さ、再現性
  4. 制御機能
  5. ロボットが設置されるスペース(塗布の範囲)
  6. コスト

その中で、いくつか気をつけていただきたいことがありますので、ワンポイントアドバイスとして紹介します。

ワンポイントアドバイス

可搬質量・各軸負荷モーメント

ロボットの可搬質量や軸負荷モーメントはロボット選定上一番重要なポイントです。ロボット先端に取り付ける塗布装置(一般に塗布ガンと呼ばれます)だけでなく、アーム上などに取り付ける機器、配管などの質量も考慮して、十分な可搬質量があるかをチェックするとともに、それらを振り回して塗布する際に各軸に作用する慣性モーメントに対しても十分な余裕を持ったロボットを選定する必要があります。余裕のないロボットを使用すると、塗布ガンの軌跡がふらついたり、素早い加減速ができなかったりすることがありますので、ご注意ください。

特に直交ロボットは、コーナー部ではオーバーシュート(行きすぎること)をするので、なるべくオーバーシュートをおさえるようにモーターの容量を大きくしてパワーで止めるようにします。一般的に直交ロボットは搬送用なので、ツールの質量に対して余裕のある可搬質量のロボットを選定して下さい。

動作軌跡の正確さ、再現性

動作軌跡の正確さは、塗布ロボット(シーリングロボット)でないと得られない場合が多いので、注意が必要です。例えば、スポット溶接に使われているロボットを塗布用に流用しようとされるユーザーが結構ありますが、スポット溶接用ロボットは、教示点の位置精度は高いものの、教示点間の移動については円弧を描いて動き、直線的に動かないものが多いので、直線塗布部であっても、教示点を増やして軌跡を直線にするなどの工夫(正確に言うと苦労)が必要になります。

制御機能

塗布ロボットは塗布装置との連動が上手くいかないと、綺麗な塗布線は得られません。よって、塗布装置との連動性を考慮した制御機能を十分に有しているかどうかの確認が必要です。例えば、塗布装置は液を吐出・停止させる必要があり、電気信号により作動させる機構を有しているので、信号を受けてから実際に液を吐出したり停止するまでに時間的な遅れ(タイムラグ)が生じます。よって、そのタイムラグ分だけロボットの動作開始を遅らせる機能が必要です。

また、前述した「完全同調制御」方式の場合、動作開始を遅らせても、まずロボットが動き始めないとヘイシンディスペンサーはモーターを回転させられません。よって、この場合は、ロボットが静止していても、ヘイシンディスペンサーを強制的に指定した回転速度で回す機能が必要です。同様に、コーナーでロボット速度が減速したときに、ヘイシンディスペンサーへの回転速度指示信号が変わっても、吐出流量が変わるまでにわずかながらタイムラグが生じるので、ロボット速度変化より先に回転速度を変えることのできる機能(先行指示機能)が必要になります。

キャプテンメッセージ

塗布ロボット(シーリングロボット)の特徴や、その選定で注意すべきことについて、お分かりいただけたでしょうか。『狙ったところに塗布できない』、『塗布線の太さが安定しない』、『塗布の始めと終わりで液ダマリができる』、『もっと速く塗りたい』など、様々な問題点・要望を持ったユーザーが多数おられますが、これは、ロボットの選定や使い方、あるいは塗布装置との組み合わせが上手くできていないことに因る場合がほとんどです。

適正な塗布ロボット(シーリングロボット)とロボットの速度変化に対応できる塗布装置を用いると、狙い通りの塗布線を作ることができ、結果、製品品質が向上するだけでなく、歩留まりが向上することにつながるのです。

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